そろそろ忘れそうな大阪弁

「記憶が頼り」という間違った言語採集。たぶん河内方言風味。

せんど

2007.01.09 Tuesday
そろそろ忘れそうな大阪弁 > サ行

意味としては「さんざん」「くれぐれも」「何度も」辺り、ですか。アクセントはHHHです。

例:「そやから7月のうちから宿題しときやて、せんど言うたのに」
(訳:だから7月のうちから宿題をしておきなさいよと、さんざん言ったのに)

ある年代より上の世代の人たちは、おとうちゃん・おかあちゃんに「もうせんど言うたったのに」とせんど怒られて育ってきたのではないかと思います。繰り返し繰り返し同じことを言ってきたのに、このガキは聞く耳を持たない。そんなガキンチョに呆れたおとうちゃん・おかあちゃんの怒りの言葉として「せんど言うたったのに」がよく含まれていました。

私は今でもうっかり「せんど」を使ってしまうことがあるのですが、通じていないときもあるのかもしれない。

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    もむない

    2007.01.09 Tuesday
    そろそろ忘れそうな大阪弁 > マ行

    今でも通じるけど古風な気配を感じる語、「もむない」。10代の人でこの語を日常的に使う人っているんだろうか。アクセントはHHLL

    おそらく「不味い」の意だと説明される場合もあるのだと思うのですが、「もむない=まずい」と書かれるとどうも違和感を覚えます。

    私の場合、もむないという言葉に「味がしない」「味が薄すぎる」という意味合いを感じます。そんなわけで「まずい」と一致しないのですね。確かに「味がしない」ものは「おいしくない」もので「不味い」に当てはまるわけですが。

    祖母は味覚について「まずい」という語をほとんど、あるいは全く使っていなかったように思います。少なくとも、味噌を入れすぎた味噌汁をすすったときに「辛っ!(からっ)」と言うことはあっても「この味噌汁、まずいな」とも「この味噌汁、もむないな」とも言いませんでした。

    だし入り味噌を使ったわけでもないのに味噌だけを入れたときなどは、きちんと「なんやもむないな」という指摘が出ます。日頃だし入り味噌を使っていたわけでもないのに味噌汁・だし抜きを作ってしまうこと自体どうかと思うのですが、やらかしたのは母です。

    「まずい」にきっちり対応しそうな語として使っていた言葉は「おいしいことない」(おいしくない、に対応)ぐらい。

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      こーすと

      2007.01.08 Monday
      そろそろ忘れそうな祖母言語

      真っ先に書いておきたい言葉。「こーすと」。たぶん感嘆詞です。祖母以外の人間が使っているのを聞いたことがありません。おそらく祖母個人語ではないかと。

      アクセントはHLLL。たぶん関東/関西を問わず"coast"をカタカナで発音したときと変わらないんじゃないかと思います。いまどきの若い衆のように尻上がりで「コースト(LLHH)」になるような体系はあまり想定してません。

      意味・用途は「えーと」等に相当するものです、たぶん。何か考えごとをするとき、なかなか思い出せないことを思い出そうとするときに、独り言としてつぶやくのです、たぶん。「たぶん」だらけなのは、家族にすら全く伝播しなかったレベルの個人語だったからです。実際に使われているのを聞いている側が、勝手に意味やら用法やらを推測するしかありません。

      使用例:「こーすと…いま何しかけててんやろ?」
      (訳:えーと…いま何をしようとしてたんだろう?)

      いちおう、小さいときに「おばあちゃん、【こーすと】て何?」と尋ねてみたことはあります。よくわからない言葉の謎が解けるのではないかと期待して。

      【こーすと】て何やてか。そない言われてもなあ。何ぞ考えごとするとき、【こーすと】言うたら出てきやす(う)なんねん。そんなけのこっちゃ」

      という説明が返ってきました。さらに、古い言葉なのか、同世代の知り合いも使う言葉なのかと尋ねてみたら、

      「どないやろ。よう知らん」

      と、一撃で片づけられたので何かと謎のままになっています。

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        各コーナーのご説明

        2007.01.07 Sunday
        このサイトについて

        カテゴリー名だけではわかりにくいような気もするので、サイトマップもどき。

        おしらせ
        何年かに1回ぐらいはおしらせすべき内容が出てきたりするんじゃないかと思うのですよ。
        このサイトについて
        サイトの趣旨やら方針やらの説明。および、この説明。いろんなサイトで「はじめにお読みください」と書かれたりしていて、たいていの場合、読まれないところのもの。
        そろそろ忘れそうな大阪弁
        私が個人的に「最近、こういう表現を滅多に聞かなくなったよな」「聞く頻度が異常に減ったな」と感じているもの。基本的に、祖母が使っていた表現、近隣のジジババが使っていた表現が中心となります。実質、大阪市内だけどたぶん河内弁地域なんじゃないか的な位置の、とある古い農村で使われていた表現が載ることになるのかもしれません。
        そろそろ忘れそうな祖母言語
        おそらく祖母個人語だろうと思われる語彙や、祖母の言語の特徴など。語彙の話でそろそろ忘れそうな大阪弁と違うところは、近隣のジジババも使っていたような表現か、家族だけが理解できる類の表現か、辺り。
        そろそろ忘れそうな習俗
        民俗学の素地は全くないのですが、祖母にはしっかりと染み付いていたのにあとの世代に受け継がれなかった習俗を思い出したら書いてみるカテゴリー。
        つれづれに
        サイト趣旨から離れて、言語全般について感じたことが何となく綴られるところになる予定。たぶん、言語と何の関わりもない話もうっかり投下してしまうんだろうな。
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        なんで「記憶が頼り」なの?

        2007.01.07 Sunday
        このサイトについて

        録音も何もない故人の言葉を採集するというのはできないわけで、それでもネットでぐりぐりと検索すれば、たぶん「ああ、そうそう、この言葉を使ってたな」というようなものを説明してくれているサイトにすぐにぶち当たるだろうと思うのです。

        そうしたサイトをあちこち調べて参考にしながら書けば楽なんだろうし、でたらめな内容になる可能性も防げそうです。でも、熱心に調べものをしてしまうと染まってしまう可能性があるのが困るのです。

        祖母の言葉・習俗を書き留めようという趣旨なので、正しい知識を得てしまうことで記憶が書き換わってしまうと困るのです。祖母が使っていなかった表現を使っていたかのように思い込んで書いてしまったり、祖母が言い間違えていた言葉(祖母にとっては、それで正しい)を勝手に修正してしまうかもしれません。そういう必要以上の正しさを持ち込んでしまうのは避けたいなと。

        書籍や既存のサイトの記述を参考にすることもあるのかもしれませんが、そういうことはあえて控えて、あくまで私の記憶に残っているものを基本にしたいと考えています。

        大正5年生まれの祖母は1998年春に倒れて意識がほとんど戻らないまま同年秋に没。尋常小学校で習ったカタカナが精一杯だったようで(カタカナもやや手強かったのか、旧仮名/新かなのいずれでもない表記をすることがあった)、ひらがなは読み書きともに困難だったようです。その関係で、綴りに引きずられて口語発音を矯正してしまうような現象はほとんどなかったのではないかと思います。

        このサイトでの何よりの問題点は、孫である私の記憶があやしいところです。

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