そろそろ忘れそうな大阪弁

「記憶が頼り」という間違った言語採集。たぶん河内方言風味。

ずつない

2007.01.31 Wednesday
そろそろ忘れそうな大阪弁 > サ行

「苦しい」ときに使うようです。アクセントはHHLL

世の中にはいろんな苦しさがあるのですが、ずつのう(ずつなく)なるのは、たらふく食べたときが多いようです。

例:「あー、ようけよばれた。ずつな
(訳:あー、たくさんご馳走になった。苦しい)

私の頭のなかで「ずつない=食べ過ぎて苦しい」が結びついているのは祖母が食後に例に挙げたようなことをよく言っていたからだと思います。本当は食べ過ぎて動けないときだけでなく、体調が思わしくない場合の様々な「苦しい」に使えるはずなのですが、家の中では「ばあちゃんの食後」にしか出てこない言葉でした。

づつない」と綴りたくなるのはなぜだろう。

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    しょうみ

    2007.01.26 Friday
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    漢字で書くと「正味」。アクセントはLHL。「正味重量」「正味100g」というような用法では標準語として通用してるのかな。容器や包装などの余分を取り除いた部分が「しょうみ」で、その重量。

    で、建前や世間体や諸々の思惑等の余分を取り除いた部分、「本音」「本当」「実際」の物事もしょうみです。横山やすしさんの物まねで出てきがちな「しょうみのはなし」も、この正味の話です。

    例:「しょうみ言うたら、店、畳もか(たともか)思てん(おもてん)ねや」
    (訳:本音を言うと、店を畳もうかと思ってるんだ)

    そんな本音を急に聞かされても困ります。

    例:「で、しょうみ、どないだんねん」(話がはっきりしない人に向かって)
    (訳:で、実際、どうなんですか)

    詰め寄られてもやっぱり困ります。

    しょうみ」という語をつかう人自体が少しずつ減っていたのですが、さらに「ぶっちゃけ、―。」「正直、―。」という表現が急速に伸びてしまったので、いまどきは「正味」を聞く頻度も急速に減ったように感じます。「正味」の意味がわかりにくい人には、いまどきの「ぶっちゃけ」に相当と説明すればよいのかもしれません。

    「ぶっちゃけ」てないのに「ぶっちゃけ」とついつい言ってしまう人がいるのと同様、ウソで塗り固めた話を「正味な…」ともっともらしく語ってしまう人も世の中にはいるようです。

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      さいだっ

      2007.01.20 Saturday
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      「そうです」の意。アクセントはHHH。最後に「っ」を書くかどうか迷いましたが破裂しない閉鎖音が入ってそうなのでつけました。閉鎖するのは「そうだそうだっ!」の「っ」で閉じるところとたぶん同じ部位。

      さい」だけ取り出して「そう」「左様」という意味を当てればよさそうなのですが、なんとなくばあちゃんの「さいだっ」が懐かしいので一連の表現として。

      さいだす」の「す」が落ちたものだと思います。「さいだす」で通じるはずなのですが、祖母がさいだすと言っていた記憶がありません。

      さいだっ」「さいださいだっ」と言えば「そうです」「そうですそうです!」と同意する意味になるのですが、「そうです」と同じく後ろにいろいろつきます。

      例:「さいだっせ」
      (訳:そうですよ)

      例:「さいだんな」
      (訳:そうですね)

      例:「さいだっか」
      (訳:そうですか)

      例:「へえへえ、さいだっかさいだっか
      (訳:はいはい、そうですかそうですか

      最後のを言われると、どうしようもなく突き放された気持ちになります。人によっては「さいでっせ/さいでんな/さいでっか」なのかもしれない。

      いまどきは「さいだっ」「さいだっせ」「さいだっしゃろか?」と言っている人に出くわすこともありません(そういえば「〜だっせ」自体聞かない)。言えば、いちおう通じるのかな?

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        じょら

        2007.01.11 Thursday
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        座りかたの「あぐら」です。アクセントはLH

        「あぐら」は組んだりかいたりしそうですが、なぜかじょらを「かく」という表現は聞いたことがありません。でも「かく」こともできるのかもしれません。とりあえず「組む」ようにしておけば問題なさそうです。

        例:「のん気にじょら組んでテレビ観てんと、家のこと手伝い(てったい)」
        (訳:のん気にあぐらをかいてテレビを観たりせず、家事を手伝いなさい)

        再現するのが難しいのですが、未だに日常会話でじょらという語を使うような方の場合、「ら」に何とも言えない加減の巻き舌が入ります。あの発音ができない。

        ちなみに、「じょら組む」という言い回しは(言えるはずなのに)聞きませんでした。1語になるわけではなく「を」を言わないだけなのですが「じょら組む」がほとんどです。

        学校で習ったり書き言葉ではよく使う、助詞。我が身を振り返っても口語ではかなり略しています。他地域の方言でもこんなに助詞が抜けることって多かったっけ。

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          さいぜん

          2007.01.09 Tuesday
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          「さっき」の意。漢字で書くと「最前」なのでしょうか。調べたくなっても調べないという間違った方針を採っているので、漢字でどう書くのかわかりません。アクセントはLLHL

          日常会話に出てくることはほぼなくなっていると思いますし、実生活でこの語を聞いたことがないという人も多そうです。ひょっとしたら「ああ、落語で聞いたことがある」ぐらいの語になっているかもしれません。

          例:「さいぜんからせんど言うたってんのに、いっこも聞かへん」
          (訳:さっきからさんざん言ってやってるのに、全く聞かない=聞こうとしない)

          さいぜんからせんど」言われる内容としては、

          • 「もうじき晩ごはんやよって、あんまりお菓子食べなや。ごはん入らんようなる」
          • 「暑い暑い言うてジュースばっかり飲んでたら、お腹痛あなんで」

          などなど。

          たいていの場合、何度も何度も注意してもらったのに、お菓子を食べ過ぎて夕食が食べきれなくなったり、ジュースを飲みすぎてお腹を壊したりして、「そやからせんど言うたやろ!」というトドメの一言を頂戴する情けないパターンになっていました。

          私の中でごはんを残すことに対してとてつもなく大きな抵抗があるのは、子供の頃の環境なのかなあと思います。食べ物については元農家ならではの感覚で「粗末にしたらあかん」ということを事あるごとに言われました。

          上記の「お菓子を食べ過ぎて夕食が食べきれない」状況でも、後先考えずにお菓子の誘惑に負けた子供ながらに「残したくないのに食べきれない…」というつらさは感じていました。いちおう。

          今では、「さいぜんからお小言をせんど聞かされる」という機会がなくなったことに寂しさを感じます。繰り返し小言を言ってくれる人がいるというのは、ありがたいもんです。

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