そろそろ忘れそうな大阪弁

「記憶が頼り」という間違った言語採集。たぶん河内方言風味。

かる

2007.01.20 Saturday
そろそろ忘れそうな大阪弁 > カ行

漢字で書くと「借る」になる、かる。アクセントはHH

この語は諸事情でみるみると廃れていますが、「染みる」に対しての「染む(しむ、しゅむ)」、「足りる」に対しての「足る(たる)」など、古い活用をしてそうな動詞の生き残りはちらほら。

例:「醤油切れたさかい、かってこうか?」
(訳:醤油が切れたから、[隣近所から]借りて来ようか?)

醤油を「かってくる(HHHLL)」ときはタダです。

例:「ええ、ええ。こうてくるよって」
(訳:いいよいいよ。買ってくるから)

お金が要るのは「こうてくる(HHHLL)」ときです。

例:「醤油ぐらい、かわんかてかったらしまいやがな」
(訳:醤油ぐらい、買わなくても借りれば済むことじゃないか)

買わなくていいから「かってこい」と。

標準語のことを考えると、紛らわしいわけです。学校の「こくご」で習うのは標準語。テレビやラジオで主に聴くのも、標準語でも本来の東京方言でもないかもしれないけど「それらしき落としどころ」のような言葉。多かれ少なかれ影響を受けます。

また、成長していくにつれて行動範囲が広くなったり生家から離れた場所が生活圏内になったりして、いろんな地域の人と関わりを持つようになります。そうなると「借ってくる」と言うと「買ってくる」だと解釈されそうな状況も増えてくるのです。

誤解や混同を避けたいという事情もあったのだと思うのですが、今では「借る」ではなく「借りる」が主流になっています。そして「かってくる」も「こうてくる」も、「買って来る」の意に。

きちんと調べたわけではないのですが、借った買うたの話をするときに隣近所から醤油を借りるという時代設定に問題がありそうな例を使ってしまうのは私だけではなさそうな気がします。

ちなみに、私の家では20年と少し前には本当に醤油を借んに行く(かんにいく)事態が起きていました。

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    ぶったん

    2007.01.20 Saturday
    そろそろ忘れそうな大阪弁 > ハ行

    「仏壇」です。アクセントはHHHH。これ以上説明の書きようがない。あっ。

    最後の「…たん」の発音が惚れ惚れするほど曖昧なところがポイントかもしれません。まかり間違っても「た」のあとに「ん」が続くのではなく、「…たん」で鼻母音ひとつです。アクセントの表記も本当はHHHでよさそう。

    あとに続く助詞等が「を」「へ」など母音になっている場合、鼻母音から滑らかに助詞へ移行します。むしろ、続きの母音も影響を受けて鼻母音化。

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      さいだっ

      2007.01.20 Saturday
      そろそろ忘れそうな大阪弁 > サ行

      「そうです」の意。アクセントはHHH。最後に「っ」を書くかどうか迷いましたが破裂しない閉鎖音が入ってそうなのでつけました。閉鎖するのは「そうだそうだっ!」の「っ」で閉じるところとたぶん同じ部位。

      さい」だけ取り出して「そう」「左様」という意味を当てればよさそうなのですが、なんとなくばあちゃんの「さいだっ」が懐かしいので一連の表現として。

      さいだす」の「す」が落ちたものだと思います。「さいだす」で通じるはずなのですが、祖母がさいだすと言っていた記憶がありません。

      さいだっ」「さいださいだっ」と言えば「そうです」「そうですそうです!」と同意する意味になるのですが、「そうです」と同じく後ろにいろいろつきます。

      例:「さいだっせ」
      (訳:そうですよ)

      例:「さいだんな」
      (訳:そうですね)

      例:「さいだっか」
      (訳:そうですか)

      例:「へえへえ、さいだっかさいだっか
      (訳:はいはい、そうですかそうですか

      最後のを言われると、どうしようもなく突き放された気持ちになります。人によっては「さいでっせ/さいでんな/さいでっか」なのかもしれない。

      いまどきは「さいだっ」「さいだっせ」「さいだっしゃろか?」と言っている人に出くわすこともありません(そういえば「〜だっせ」自体聞かない)。言えば、いちおう通じるのかな?

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