そろそろ忘れそうな大阪弁

「記憶が頼り」という間違った言語採集。たぶん河内方言風味。

かど

2007.01.13 Saturday
そろそろ忘れそうな大阪弁 > カ行

たぶん漢字で書くと「門」。アクセントはHH

「家の前にある庭」がかどです。で、にわと言うと、家の中にある土間を指します。

大阪市内・近郊で「かど→いわゆる庭」「にわ→いわゆる土間」という対応関係が今でも成り立っているご家庭は存在するのでしょうか。私の場合、「そろそろ忘れそう」どころか、このサイトを作ろうと思い立って記憶をたどっているうちに思い出すまですっかり忘れていました。

今はおそらく

  1. かど→あまり通じない。一部の人には「庭」の意で通じる。
  2. にわ→同じく「庭」のこと。「土間」ではない。

というような認識になっている人がほとんどだと思います。

子供の頃に「ばあちゃん、隣の(家の)落ち葉、庭にようけ落ちてたからホウキで掃いといた」と言って、

「隣からにわに葉(はあ)入るて、そんな家あるかいな」

と言われたときの衝撃は大きかったものです。

にわの項に記載の「かどにわの違い」の説明を受けたのはこのとき。

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    よって(に)

    2007.01.12 Friday
    そろそろ忘れそうな大阪弁 > ヤ行

    あまり文法的なことで悩みたくないので、動詞が前に来る場合は何形なのかとかそういうことは触れないことにしておきますが、いまどきの日常会話での出現頻度から考えるとなぜかよく知られている(と思われる)「〜さかい」と同じ意味です。「だから」などの意。アクセントはHHL。「に」が続く場合はHHLL

    いまどき、大阪市内でこの種の「さかい」や「よって」を耳にすることはほぼありません。私と同年代辺りなら理解不能ということはなさそうですが、同年代の人が日常生活で使っているということもなさそうです。古い言い回しなのでしょう。

    例:「ごはん、なあ。さいぜん、せんどよばれたよって入らん」
    (訳:ごはん、ねえ。さっき、さんざんご馳走になったから入らない=食べられない)

    例:「先行とく(いとく)よってに」
    (訳:先に行っておくからね)

    ありとあらゆる状況で「さかい」と置換可能なのかどうかはよく調べてないのでよくわかってませんが、安直に置き換えてもよさそうな気配。

    私は「さかい」よりもこちらの「よって」のほうをよく聞いてきたように思うのです。祖母が「さかい」よりも「よって」をよく使っていたのでしょう。

    いずれ取り上げる予定ですが、「問題ありませんからね」「気にしないでくださいね」という気持ちを込めて言う懐かしい表現「かましまへんよってに」(訳:構いませんからね)は、「さかい」よりも「よって」のほうが似合う気がします。

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      じょら

      2007.01.11 Thursday
      そろそろ忘れそうな大阪弁 > サ行

      座りかたの「あぐら」です。アクセントはLH

      「あぐら」は組んだりかいたりしそうですが、なぜかじょらを「かく」という表現は聞いたことがありません。でも「かく」こともできるのかもしれません。とりあえず「組む」ようにしておけば問題なさそうです。

      例:「のん気にじょら組んでテレビ観てんと、家のこと手伝い(てったい)」
      (訳:のん気にあぐらをかいてテレビを観たりせず、家事を手伝いなさい)

      再現するのが難しいのですが、未だに日常会話でじょらという語を使うような方の場合、「ら」に何とも言えない加減の巻き舌が入ります。あの発音ができない。

      ちなみに、「じょら組む」という言い回しは(言えるはずなのに)聞きませんでした。1語になるわけではなく「を」を言わないだけなのですが「じょら組む」がほとんどです。

      学校で習ったり書き言葉ではよく使う、助詞。我が身を振り返っても口語ではかなり略しています。他地域の方言でもこんなに助詞が抜けることって多かったっけ。

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        よろしゅうおあがり

        2007.01.10 Wednesday
        そろそろ忘れそうな大阪弁 > ヤ行

        実際の発音には揺れがあってよろしゅおあがりだったりよろしおあがりだったりします。私が家で聞いていたのは「よろしゅおあがり」。アクセントはHHLLLLH

        これはいったい何なのかと言うとですね、「ごちそうさま」に対する返事なのです。食事をきれいに平らげて「ごちそうさま」(家庭内のくだけた会話ですので実際は「ごっそさん」「ごっつぉさん」)と言うと「よろしゅおあがり」という返事が返ってくるわけです。祖母は必ず言っていました。

        「ごちそうさま」への返事があるということ自体に衝撃を受ける方もいらっしゃるとか何とか。確かに自分の生まれ育った土地で「そんなものは、ない」のが一般的だったら感覚的にわかりづらいものだと思います。

        この表現もあまり聞かなくなったのですが、京都・大阪では、食べ終わったときにこういうやりとりをして育った人たちが親の立場になり、21世紀生まれの子供に「ごちそーさま!」と言われては「よろしゅうおあがり」と返す、ということを毎日しておられる事例もどこかにあるのだと思います。そういう一部のご家庭では受け継がれていくはずなのですが、どうなっていくんだろう。

        この先、徐々に徐々に「ごちそうさま」に「よろしゅうおあがり」という返事がある(という地域もある)ことを知らない人が増えていくのではないかと。

        そういえば「よろしゅうおあがりは、いただきますへの返事」説をどこかで見たような記憶があるのですが、詳細は忘れました。ともあれ、「いただきます」に対して使っている人もいるようです。

        追記:
        「そういえば、お粗末様という言葉があったような気がする」と、書いてから思い出しました。全く使わないので存在を忘れてます。よろしゅうおあがりの訳としてはお粗末様(でした)を当てればいいのかな。

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          さいぜん

          2007.01.09 Tuesday
          そろそろ忘れそうな大阪弁 > サ行

          「さっき」の意。漢字で書くと「最前」なのでしょうか。調べたくなっても調べないという間違った方針を採っているので、漢字でどう書くのかわかりません。アクセントはLLHL

          日常会話に出てくることはほぼなくなっていると思いますし、実生活でこの語を聞いたことがないという人も多そうです。ひょっとしたら「ああ、落語で聞いたことがある」ぐらいの語になっているかもしれません。

          例:「さいぜんからせんど言うたってんのに、いっこも聞かへん」
          (訳:さっきからさんざん言ってやってるのに、全く聞かない=聞こうとしない)

          さいぜんからせんど」言われる内容としては、

          • 「もうじき晩ごはんやよって、あんまりお菓子食べなや。ごはん入らんようなる」
          • 「暑い暑い言うてジュースばっかり飲んでたら、お腹痛あなんで」

          などなど。

          たいていの場合、何度も何度も注意してもらったのに、お菓子を食べ過ぎて夕食が食べきれなくなったり、ジュースを飲みすぎてお腹を壊したりして、「そやからせんど言うたやろ!」というトドメの一言を頂戴する情けないパターンになっていました。

          私の中でごはんを残すことに対してとてつもなく大きな抵抗があるのは、子供の頃の環境なのかなあと思います。食べ物については元農家ならではの感覚で「粗末にしたらあかん」ということを事あるごとに言われました。

          上記の「お菓子を食べ過ぎて夕食が食べきれない」状況でも、後先考えずにお菓子の誘惑に負けた子供ながらに「残したくないのに食べきれない…」というつらさは感じていました。いちおう。

          今では、「さいぜんからお小言をせんど聞かされる」という機会がなくなったことに寂しさを感じます。繰り返し小言を言ってくれる人がいるというのは、ありがたいもんです。

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